Yes

Leave It ( Acappella )

1984 ATCO B9787T 12" Single





 Yes です。プログレです。何故かアカペラです。
              しかも12インチシングルです。

 Yes や King Crimson をはじめ日本でも根強い人気のあるプログレシブ・ロックですが、 80年代の前半は何度目かのブームでありました。81年には Rober Fripp が Crimson の封印を解き、アルバム『Discipline』を発表。同年プログレ失業組合からスターが選抜され Asia が誕生。「Heat Of The Moment」が大ヒット。そうした流れの中で 83年に Yes が再編され、大ヒットとなったカムバックアルバム『90125』が生まれたのでした。

 この時期になぜ Yes がよみがえって売れたのでしょうか。Crimson や Asia の活躍で往年のファンの財布のヒモと涙腺が緩くなっていたのもあったでしょうが、音楽的には Yes が隠し持っていたポップさと奇才プロデューサ Trevor Horn のわかりやすい音作りが結びついたせいだと思います。


 プログレというと難解、変拍子、しかもLP片面1曲全2曲というイメージが一部にありましたが、『90125』は明朗完結打ち込みリズム、曲も9曲と今日の常識的な作りです。特に打ち込みのリズムは、プログレ業界にあってはかなりの画期的なできごとで、幾何図形のジャケットとあいまって、僕らは新生 Yes のイメージをナントも未来的に感じたものでした。ちなみにプロデュースの Trevor Horn はこの Yes のヒットの直後から、Frankie Goes To Hollywood のプロデュースで大当たりをとり、世界中を打ち込みロックの虜にしたのでした。
 この曲「Leave It」は大ヒットシングル「Owner of a Lonely Heart」(最近も最近も車の CM で使われていますね)に続く第2弾シングルで、Yes 得意のコーラスが存分に楽しめます。リードヴォーカルの Jon Anderson は美しいハイトーンで有名ですが、彼の声がベースの Chris Squire の正確で澄んだ声とよく合います。また新入りの Trevor Ravin がハスキーな高声を持った歌える男でうってつけ。主旋律をコーラスが打楽器的に何十にも追いかけます。
 このアカペラはアルバム収録テイクから伴奏を外したものですが、複雑な構成がよくわかり、かつスリリングです。ちなみに本レコードは「プログレの12インチ・シングル」という妙なもの。当時は CD マキシ・シングルという習慣はなく、12インチはロング・バージョン・ディスコ用が相場。一方プログレは踊れない、ファッショナブルでない音楽で、12インチなんて出るとは思いませんでした。でも時代は猫も杓子も12インチ。Yes も Crimson も12インチを出していたんでしたねー。
 さて、この後の Yes の顛末はというと…。仲間割れして、再編に乗り損なったメンバーと合流してもう一つの Yes を結成(「本家」も存続して南北朝時代)。その後急転全員和解して大所帯 Yes の結成(連合組合時代)。その後は…もうよく分かりません。しかしこの時代の Yes は神秘さとポップさが同居した、なかなか魅力的なバンドでした。

(たかはしかつみ)





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