George Harrison

Love Comes To Everyone

1979 " George Harrison " Dark Horse DHK 3255/LP





 とにかくびっくりしました。2000年最初に飛び込んできた音楽関連のニュースは、George Harrison が年末に自宅で暴漢に刺されたこと、ただし重傷ながら生命には別状ないということでした。幸い George は順調に回復していて、ファンヘ発表されたメッセージの中で無事をアピールし、傷を負いながらも冷静に振る舞った婦人の Olivia への感謝を伝えてくれました。
 まずはよかった、ということで George の'79年のシングル「Love Comes To Everyone」。春の陽光に包まれた George がおだやかに愛を歌います(アルバムの邦題はナント『慈愛の輝き』!)。
 この曲は70年代的な AOR といいますか大人のロックで、とても耳触りが良いのですが、実はなごんでは居られない。最高のロック・ミュージシャンが余裕しゃくしゃくでバトルをしているのです。陽だまりのロックバトル。イントロは無二の親友 Eric Clapton。「My Sweet Load」や「While My Guitar」のような派手さはないものの何度も聞きたくなるフレーズを決めてくれます。


 それを引き取るのが George のヴォーカル。その後ろでは大河のようにリズムを刻むドラムの Andy Newmark と、控えめながら時たま16分音符でハネて自己主張に余念の無い Willie Weeks のベースが支えます。
この70年代を代表するリズムの2人はこの時点で George と5年以上の付き合いのはず。最初で最後のソロ全米ツアーもサポートしていて完璧なアンサンブルです。間奏は今度は George 本人のギターソロ。元祖ヘタウマです。
 Clapton を起用しながら実はイントロだけしか頼んでいないのは大したもんだなあ。で、終わったと思ったらそこに Steve Winwood が乱入。彼の良さであるハリキリがつぶさに感じられます。George と Clapton にかかると、Winwood もお若いの、といった感じ。前向きなハートが感じられるキーボードのソロです(だからこの曲は間奏が普通の曲の倍ある)。George の代表作というと The Beatles 解散直後の『All Things Must Pass』と Jeff Lynne と組んだ『Cloud Nine』が定盤ですが、この曲にも手を伸ばしていただきたい。ベストにも入っています。
 George の思い出というとやはり'91年の来日公演。これはここ25年間で唯一のツアーで、日本のファンは本当にいい思いをしました。この時初日の横浜アリーナだけは本曲を演奏したそうですが、東京ドームでは割愛され、今だにどんな演奏だったかわかりません。聞きたかった・・・だからコンサートは全部行くもんだよ、って circustown の読者、メンバーあちこちから声が聞こえて来そう。ちなみに達郎氏はこの時バッキングメンバーの Andy Fairweather-Low(もと Amen Corner、ちょい驚き) をわざわざ訪ねたそう。クラプトンだって頼めば会えただろうと思いますが。らしい、というか。
 George Harrison がまとめた、アンサンブルと個人技共存型70年代サウンドです。夫妻の心身の完治を心からお祈りいたします。

(たかはしかつみ)





Copyright (c) circustown.net