Blossom Dearie

Hello Love

1959 " My Gentleman Friend " Verve/Polydor POCJ2653/CD





 ジャズ・ヴォーカルを聴くきっかけになったのはなんだろうか。そもそもジャズを聴くきっかけは、FM東京で日曜の午後3時に放送されていた『アフタヌーン・ジャズ』(ジャズ・ピアニストの大野雄二氏と女性アシスタント)という番組を聴いたことでした。John Coltrane、Sonny Rollins、Miles Davis、Bill Evans、Wes Montgomerry などのジャズの有名な曲(ビギナー向け?)を聴き、加えてヴォーカルも紹介されていました。
 女性ジャズ・ヴォーカルで初めて聴いたのは Ella Fitzgerald(一番入りやすいヴォーカル・スタイルのシンガーではないでしょうか)、その後ポップス・ファンには Toys のオリジナルより有名な「A Lover's Conchelot」で知られている Sarah Vaughn、独特な歌唱の Carmen Mcrae、そして Billie Holiday、白人では Chris Connor などから聴き始めました。その中で毛色の変わっているのが Blossom Dearie ではないでしょうか。
 その声を聴いて、ジャズ評論家の故斉木克己氏が『Once Upon A Summertime』(Verve/Polydor POCJ2082)のライナーノーツの中で「ユニーク、キュート、コミカル、フリーキッシュ、レア、プリティ、ファニーなどの形容詞のありったけを使っても彼女の個性を表現するには難しい」と書いているように、ウィスパリング・ヴォイスというか、「カマトト」ぶった声というか、一度耳にしたら忘れられない声だと思います。


 『My Gentleman Friends』は、Verve(最も充実し、素敵なアルバムを残した)時代の『Blossom Dearie』、『Give Him The Ooh-La-La』などと少し趣が違い「Little Jazz Bird」から「Someone To Watch Over Me」まで小品集といった感じで、めずらしくフランス語で歌われている曲−−夫君でサックス、フルート奏者の Bobby Jasper の流麗なフルートがいい味付けになっている「Chez Moi」、弾んだ調子の「Boum」、しっとりと歌われる「L'tang」−−もいいのですが、ピアノの弾き語りで彼女ならではのコケティシュな世界が楽しめる「Hello Love」も素敵な歌だと思います。初めて聴く方には、Verve時代の代表曲を集めた彼女自選のジャズマスター51『Blossome Dearie』(Verve 314529 906-2)をお奨めします。Blossom Dearie のファンにきっとなるはずです。

(伊東潔)




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