Barry Mann

Just Once

2000 " Soul & Inspiration " ATLANTIC 83239-2/CD





 前作から20年振りに、あの気高く力強い声が帰ってきました。これまで Barry Mann が作ってきた数々の名曲を本人が自ら高らかに歌い上げたセルフ・カバー集。
 全曲、 Barry Mann のピアノの弾き語りを中心にしたシンプルな構成ながら、あらためて Barry Mann の創り出す楽曲に胸つかれ、力強く優しいメロディは心に響き渡ります。
 このアルバムの仕掛人は、Jimmy Webb のセルフ・カバー集、『Ten Easy Pieces』と同じ人、Jay Landers 。そしてプロデュースも同じく Fred Mollin が手掛けており、ミュージシャンも概ね同じ人々で占められています。Barry Mann 自身のライナーによると、Jay Landers が送ってきた、Jimmy Webb の『Ten Easy Pieces』を聴いて俄然やる気になったとのこと。演奏スタイルは『Ten Easy Pieces』とほぼ同じ。


 最後の曲、「Somewhere Out There」を除いて各楽曲には Barry Mann を慕うボーカリストがバックまたはハーモニー・ボーカルとして参加。特に1曲目の「You've Lost That Lovin'Feeling」では、ブリル・ビル時代からの盟友でライバル、そして Barry Mann の一番の理解者であろう Carole King との 素晴らしい Call & Responce を聴くことができます。Dolly Parton でヒットした 「Here You Come Again」では、Leah Kunkel がバックボーカルで参加。彼女は、The Mamas & The Papas の Mama Cass こと Cass Elliot の妹。亡くなった Cass Elliot は Barry Mann の楽曲の良き表現者でした。その他には、Marc Jordan、Brenda Russell、Richard Marx、Bryan Adams、Daryl Hall、J. D. Souther、Peabo Bryson といった面々。
 特に素晴らしいのは、アルバム後半部分の80年代以降に書いた曲、「Just Once」、「Here You Come Again」、「Somewhere Out There」の3曲。オリジナルに見られる大仰なアレンジを取り払ってもその美しいメロディは原石のように光輝いています。オリジナルの James Ingram や Dolly Parton の歌を聴く必要はもうありません。
 80年以降、Barry Mann は、ロス・オリンピックのテーマソングの作曲者として抜擢(「Olympia」)されるなど、アメリカを代表する作曲家としての認知度はかなりあったのですが、Performer としてはほとんど表舞台に立つことはありませんでした。これを機会になんとかもう一枚オリジナル・アルバムを出してもらいたいものです。
 このアルバムジャケットの笑顔がとてもいいでしょう?内ジャケットの愛妻、Cynthia Weil との2ショットも楽しそう〜。Here You Come Again!

(富田英伸)





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