Lynn Anderson

I Never Promised You a Rose Garden

1970 "ALL-TIME LEGENDS of country music"
LEGACY/COLOMBIA CK 53817/CD





 今年の『新春放談』では Buddy Harman 対 Hal Blaine のドラマー談義が出てきたようですが (こういうのがまたいいですね)、大滝さんの好きな Buddy Harman のドラムによりますところのヒット曲から、Lynn Anderson 「Rose Garden」。
 軽快なストリングスのイントロに乗って始まるこの曲は、典型的なナッシュビル・サウンドのカントリーでかつ極上のポップです。魅力は、Lynn の絶対日本人好みな優しいヴォーカルに、流れるようなリズム隊のからみ。タンバリンと Harman の軽いスネアの連打をベースに、ギターとスチール、それにストリングスがいわれもなく心地よいアンサンブル奏でます。
 この曲を書くと、どうしても南沙織に触れたくなります(笑い)。はっきり言って劇似。でも、メロディーの工夫(オリジナルに勝るとも劣らない)、歌詞のよさ(日本語有利でこちらに軍配)、それにリズムの心地よさまで再現したサウンド(シンシアの声質もピタリ)がそこらのものとは違います。着想、アレンジ、スタジオワークと揃って腕の良さを見せ付けます。森高のカバーはサウンドが違うから60点。


 閑話休題。この曲はアトランタ生まれのシンガーソングライター Joe Southの作詞作曲。オリジナルのアレンジはスペクターくずれみたいで、ちょっといただけませんが、この人は Deep Purple の「Hush」の作者でもあったりもします。南部は深い。Lynn Anderson がヒットを飛ばしたこの70年の同時期のヒット曲には George Harrison の「My Sweet Lord」、Elton Johnの「僕の歌は君の歌」、それに Stephen Stills の「Love The One You're With」なんてのもあります。スイートでスムーズな、いい時代だなあ。
 ドラマーの Buddy Harman についても触れましょう。Harman はカントリーの聖地ナッシュビルを代表するセッションドラマー。代表的なバッキング参加に Roy Orbison の「Pretty Woman」、Patsy Cline の「Crazy」、Everly Brothers の「Cathy's Clown」などが。無駄を排した音楽性のあるスネアに特徴があります。彼はつい最近までナッシュビルのカントリの殿堂 Grand Ole Opry という所のハウスバンドで叩いていたそうですが、解雇という話しを聞きました。どうしているのでしょうか。
 さて、新春放談で大滝さんが言っていたのは、「自分が好きなサウンドを追いかけていたら、どれも同じ職人の手だった」という話しだと思います。日本で言うと左甚五郎ですか(オチがしょうもない落語ですが :-)。筆者の世代だと、Jim Keltner かなぁ、いや青山純だという読者もいらっしゃるかも。ただこの話しはどのドラマーが良いか悪いかという話しではありません。自分の耳を信じて、自分の好きな音楽を探求する態度を、一流のリスナーでもあるお二人から聞くのが、新春の楽しみでありますね。
 「Rose Garden」はカントリーのヒット曲集によく収録されています。写真もその一つでお勧めです(1930年代から80年代のヒットを拾い聞きできる)。写真右下のゴージャスな女性が Lynn Anderson です。

(たかはしかつみ)





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