B.J. Thomas

Happier Than the Morning Sun

1972 "Billy Joe Thomas" Scepter 5101/LP VICP-60691/CD





 朝の光よりも僕は幸せ。それは君に恋してるから。希望溢れる B.J. Thomas の声。そして Stevie Wonder のハーモニカは心の奥で響き渡り、涙しているのも忘れてしまう。
 1999年、僕の大好きなレコード『Billy Joe Thomas』がCD化になりました。このレコードは15、16才の頃、僕が初めて買った輸入レコード。シールドを裂き、アルバムを開いた時の、あの独特の輸入盤のインクの匂いが鼻をつっついたことは今でも忘れていません。はじめは地味かなと思ったのですが、何度も何度も聴いているうちにだんだんと心に染みてくる。これはたぶん僕が過去一番聴いているレコード。
 『Billy Joe Thomas』は1972年の作品で、プロデュースにあたったのは、Steve Tyrell と Al Gorgoni 。Al Gorgoni は、Chip Taylor(本アルバムにも参加)と " Just Us " というグループ、また Trade Martin を加えて " Gorgoni,Martin & Taylor " というグループを結成して活動していた人で、アコースティック・ギタリストとしても優秀なミュージシャン。

 Steve Tyrell は Scepter Records のスタッフ・プロデューサーですが、1999年に、突如ソロ・アルバムを発表しました。


 このアルバムは、この2人の音楽的人脈より、楽曲を提供した作曲者自身が演奏やコーラスに参加しており、作家達が楽曲に込める想いは、 B.J. Thomas の素晴らしい歌唱によって充分に引き出されています。Al Gorgoni(g.)、Kirk Hamilton(b.)、Alan Schwartzberg(dr.)、Glen Spreen(key. str-arr.)らの演奏に、作家陣である Paul Williams、Stevie Wonder、Barry Mann、Jimmy Webb、Carole King、Wayne Carson、Mark James、Jon Stroll、John Sebastian が参加。これだけバラエティで個性豊かな人々が参加していますが、サウンドの要になった Al Gorgoni や Glen Spreen の力量により内省的で落ち着いたトーンに仕上がっています。
 見開きのジャケットには参加ミュージシャン達のレコーディング風景がコラージュされているのですが、時が経つうちに名前と顔がだんだん一致してくるのがちょっとした僕の楽しみでした。そう、Barry Mann のことを初めて知ったのもこのレコード。そしてこのアルバムのクレジットはレコードを探す時やミュージシャンを知るためのいいガイドにもなっていました。
 ザラついたセピア色のジャケの感覚、輸入アナログ盤独特の匂いは過去のものになってしまったけれども、Billy Joe の歌は褪せることなく僕の心に響いています。

(富田英伸)




Copyright (c) circustown.net