松田聖子

瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラフ

1983 CBS SONY 07SH 1421/EP





 松本隆作詞による松田聖子の一枚ならこれ。
 松田聖子を本当によく聞いていました。実はコンサートも何度も行っていました。そんな筆者もいつしか松田聖子を聞くことは少なくなったのですが、このシングルだけは時々ターンテーブルに。そしてこの秋「風街」渋谷で、思いがけなくこのB面曲に再会したのでした。
 松田聖子は1981年から'87年にかけて、松本隆作詞のシングルを17作発表。これは連作中の10作目にあたります。
 B面の「蒼いフォトグラフ」は彼氏をフッてしまう女の子が、その最中の気持ちを綴った内容です。でも全然じめじめしていないし、なんで別れてしまうのかも分からない。聞いている方は、「輝いた季節(とき)」を素直に回想する主人公の恋愛感情を共有できます。松田聖子は今聞くと、とても可愛い声で歌っています。ハスキーで抑え目の高音で、すごく表現力が進歩しています。タダのぶりっ子じゃない。それを支えるユーミンと松任谷正隆のサウンドには秋がいっぱいです。さっぱりとした終わりの季節、微妙な気持ち。でも全体を通す前向きなトーンはこの曲とアレンジならではのものでしょう。ぜひ秋のうちに一回聞いてみて下さい。一方、A面の「瞳はダイアモンド」は松田聖子のヴォーカルがより楽しめます。"瞳わぁっ!ダーイアモンド"のくだりでの彼女の「しゃっくり」唱法が、実にたまりません。


 ところで,本作発表の1983年は松本隆が大活躍した年です."松本隆"作品鑑賞事典から、83年発表の筆者のレコード棚にある松本隆作詞シングルを探してみたところ、これだけありました。大好きな曲ばかり、まるで毎月の贈りもの。

1月 秘密の花園 (松田聖子)
3月 君に、胸キュン (Y・M・O)
4月 天国のキッス (松田聖子)
4月 紐育物語 (森進一)
5月 探偵物語 (薬師丸ひろ子)
7月 過激な淑女 (Y・M・O)
8月 ガラスの林檎/SWEET MEMORIES (松田聖子)
9月 Tシャツに口紅 (ラッツ&スター)
10月 瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラフ (松田聖子)
 自称洋楽少年の筆者は、どうやら83年当時はCulture Clubの「Karma Chameleon」にウンザリしながら、しっかりと日本語の音楽を吸収していたようです。83年は『メロディーズ』の年でもありましたね。本当にいい音楽を聞いたぞ。
 さて、「風街」でこの曲を歌ってくれたのは、ヒックスビルの真城めぐみちゃん。松本隆作詞活動30周年記念ライブ「風待ミーティング」の舞台でありました。しかし大ヒットが山ほどの作詞家先生のトリビュートの割には、実にヒット曲が少なかったなぁ。凄いことをしてるのにさり気なく、細野さんとの「風をあつめて」をあんなに淡々と決められちゃって参りました。あのクールさ、いや微熱なのか?!この感覚が風街の素敵な所なのかも。
 本作はAB面ともに、12月に発売されるCDボックス『風街図鑑』に収録されています。松田聖子は新作で松本隆を起用しています。久しぶりに聖子ちゃんのCDを買おうかな。松本隆さんの風待茶房もよろしく。

(たかはしかつみ)


風待ミーティングのリーフレット



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