Barry Mann

Don't Seem Right

1975 "Survivor" RCA 10860/LP





 聞こえてくるのは Barry Mann 自身の力強いピアノと声だけ。その力強い声は僕の心の 奥にある魂を呼び起こす。そしていつもは雑踏に埋もれて見えない地平線がそこに現われ、暖かい月は僕の往く道を照らし出す。
 偉大な音楽家やミュージシャンのことを高らかに歌い上げた「I'm A Survivor」や「My Rock and My Rollin' Friends」、愛する人や永遠の愛を切々と歌った「I'll Always Love You」や「Nobody But You」。
 全編にわたって Barry Mann の誇り高き声から僕の心に響いてくるのは、勇気であり、 希望という言葉。Laura Nyro の『New York Tendaberry』同様、一年に何度もターンテーブルに乗ることはないけれど、最も大切なレコードの1枚。
 このアルバム『Survivor』は作曲家 Barry Mann がシンガーソングライターとして『Lay It All Out』に続いて、1975年に Equinox から発表したアルバム。楽曲は殆ど Barry Mann-Cynthia Weil によるもの。「Don't Seem Right」と「I'll Always Love You」の2曲は作詞もBarry Mann 自身が手掛けており、演奏、詩ともにシンプルながらシンガーソングライターとしての Barry Mann の熱い想いが伝わってきます。


 プロデュースはBruce Johnston と Barry Mann 自身が手掛けているほか Bruce Johnston の盟友 Terry Melcher も "Bless You Terry Melcher for Waking All This Come About ! "として名を連ねています。
 バックバンドは Bill House が率いる The Roadhouse Band 。Stan House (Dr.)、John Hobbs (Pf.)、 Curtis Stone (B.)、Bill House (G.)、Jim Seiter (Per.)、Kenny Hinkle (B.)といった Equinox で活躍していたミュージシャン達が、Barry Mann のピアノとともに力強い演奏を披露。そしてコーラスには先の Bruce Johnston、Terry Melcher、妻で作詞の Cynthia Weil 、The Roadhouse Band の面々に加え、Spanky McFarlane (Spanky & Our Gang)、 Jerry Yester (メンバーとしてMFQ,Association, Fifth Avenue Band のプロデュース等)、 John Seiter (Jim Seiter の兄弟)、Daryl Dragon and Toni Tennille (Captain & Tennille)らが参加。ゴスペルにも似たスピリチュアルなコーラスが展開されています。クレジットに The Roadhouse Band 以外に Hal Blaine (Dr.)、Earl Palmer (Dr.)、 Mike Kowalski (Dr.) 、Ed Carter (G.)、Larry Knechtel (Pf.)の名前も見つけることができます。
 ちなみに 山下達郎さんのソロ・デビューアルバム『Circus Town』のロサンジェルス・サイド(B面)のプロデュースはこのアルバムに参加している Jimmy Seiter & John Seiter 兄弟。録音スタジオもこのアルバムと同じハリウッドのRCA スタジオが使われています。
 99年11月、BMGから発売される予定のコンピレーションアルバム『Best Of Singer Song Writer』(監修:長門芳郎さん)には『Survivor』から2曲収録予定とのこと。とても待ち遠しいですね。
 1994年。ライブ『山下達郎 Sings シュガー・ベイブ』に行った時、開演前の会場から 流れてきたのはこの Barry Mann 『Survivor』でした。このアルバムが発売された1975年はちょうどシュガー・ベイブが本格的に活躍を始めた年。達郎さん、全国を巡るライブの合間にこのアルバムを聴いていたのでしょうか。もう開演だというのにそんなことを考えていたら、会場がぼやけてしまってよく見えず、僕はシャツで顔をゴシゴシこすっていたのでした。

(富田英伸 / Thanks To 三浦豊樹)






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