Nino Tempo & April Stevens

You'll Be Needing Me Baby

1967/1999 " All Strung Out" Varese Sarabande VSD-6036/CD





 Nino Tempo & April Stevens。 他人かと思ってしまいますが、実は姉弟デュオ。Carpenters とまではいきませんでしたが、1963年に全米1位を獲得した「Deep Purple」や同じく63年の大ヒット「Whispering」とヒット曲を連発したデュオとして有名です。
 Nino Tempo は元々はサックス・プレイヤーとして活動していましたが、 Phil Spector のプロダクションにセッション・プレイヤーとして参加。キーボードやドラムも叩いていたようです。やがて自身の音楽活動に専念するようになり、前述のようなヒットを飛ばすことになります。
 そんな彼らが、1967年に "White Whale" という西海岸の小さなレーベルからリリースしたのが本作です。このアルバムに収められたタイトル曲の「All Strung Out」が全米26位とスマッシュ・ヒットしました。この曲の作曲とプロデュースを Nino Tempo と共同で担当したのが、幻のソフト・ロック・グループ、The Parade の中心的メンバーでもあった Jerry Riopelle です。


 Jerry Riopelle も Phil Spector のもとで、The Righteous Brothers の「You've Lost That Lovin' Feelin'」(ふられた気持)や Ike & Tina Turner の「River Deep-Mountain High」など数多くのセッションに参加しており、そういったコネクションがもとで、このレコーディングに参加することになったものと思われます。
 今回の Varese Sarabande からのリ・イシューにあたりシングル4曲が追加収録された全16曲の構成は、バラエティに富んだ内容になっています。1曲目の「You'll Be Needing Me Baby」は Burt Bacharach を思わせるようなコード進行の曲で、個人的にはこのアルバムのベスト・トラックだと思います。作曲したのは Bread のメンバーでもあり、60年代後半から70年代にかけて都会的なセンスのポップ・ミュージックを数多く産み出してきた、David Gates です。彼もまた、Phil Spector 周辺人脈との交流が盛んな人です。
また、Jerry Riopelle が参加した「All Strung Out」と「The Habit Of Lovin' You Baby」はそのまま The Righteous Brothers が歌ってもおかしくないほどのウォール・オブ・サウンドに仕上がっています。それもそのはず、フィル・スペクターのスタジオ、"ゴールド・スター・スタジオ"で Larry Levine をエンジニアに、フィレスのセッション・ミュージシャン達によってレコーディングされており、まさにウォール・オブ・サウンド然とした仕上がりになっています。そうかと思えば「Follow Me」や「Out Of Nowhere」などはもろに同時期の The Beatles を意識した作りになっていたり。そのほか、The Association あたりがやりそうな「Alone Alone」などポップスの黄金律といったハーモニーが次々に飛び出してくるあたりはさすがに Nino Tempo の手腕といったところです。
 もともとはポップスのスタンダードを歌っていたデュオらしく、ボーナス・トラックでは「Let It Be Me」のカヴァーも披露しています。

(脇元和征)






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