Christmas And The Beads Of Sweat
(Columbia PC30259)
 1970年、彼女は4枚目のアルバムとなる『Christmas And The Beads Of Sweat』を発表します。プロデューサーに Aretha Franklin のプロデューサーとしても有名なArif Mardin と The Rascals の Felix Cavaliere を迎え、Roger Hawkins のドラムス、 Eddie Hinton のギターなどマッスル・ショールズのミュージシャン達を集めて録音されました。このセッションは緊張感とエモーショナルな雰囲気に満たされています。とりわけ、A面のプロデューサー、 Felix Cavaliere は Laura Nyro と同じイタリア系アメリカ人であるだけでなく、同じくニューヨークを中心に活動してきた人であり、音楽的背景を同じくする中から必然的に生まれてきたコラボレーションだったのではないでしょうか。Arif Mardin はこの当時 Aretha Franklin のアルバムでマッスル・ショールズのミュージシャンを起用して破竹の勢いにあり、Laura Nyro がこの二人を起用したことは時代的な必然があったのでしょう。そんなこともあってか、このアルバムを聴くとき、彼女の歌こそ極上のブルー・アイド・ソウルであることを感じます。
 個人的にはこのアルバムは、10代の頃初めて買った彼女のアルバムであるということもあり、とても思い入れがあります。



Happiness on the uptown side
at my party in the morningtide
oo la la la blackpatch

"Blackpatch" Lyric by Laura Nyro 1970



Gonna Take A Miracle
(Columbia PC30987)
 こうして60年代末期から70年代初頭にかけて意欲的に作品を発表し、多くのアーティストが彼女の曲を取り上げてヒットしたことで名声をものにした彼女は、満を持して一枚の企画アルバムの制作に取りかかります。 当時 Philadelphia International Recordsで隆盛を極めていた名プロデューサー・チーム Kenny Gamble & Leon Huff にプロデュースを託し、フィラデルフィアのシグマ・サウンド・スタジオでレコーディングされたこのアルバムは、彼女がブロンクスの街角でスパニッシュの男の子達と歌ってきた、往年のR&Bの数々を歌ったものでした。彼女の音楽的ルーツを辿る旅ともなるこの『Gonna Take A Miracle』で彼女は一つの到達点を極めたかのように、大好きな歌をのびのびと歌っています。


Labelle
 裏ジャケットに映っているのはこのアルバムで Laura Nyro のソウルフルな歌唱を引き出したとも言える、Labelle の3人。フィラデルフィア出身のガール・グループでメンバーの一人はのちにソロで大ヒットする Patti Labelle です。Laura Nyro と彼女たちの緊張感溢れる掛け合いはこのアルバムの聴き所の一つ。脇を固める布陣は Jim Helmerのドラムス、Ronnie Baker のベース、Norman Harris のギター。アレンジャーとしてThom Bell も参加しており、極上のフィラデルフィア・サウンドが展開されています。ここで、収録された10曲をご紹介しておきましょう。

「I Met Him On A Sunday」(S.Owens/D.Coley/A.Harris/B.Lee)1958年ニュージャージー出身のガール・グループ The Shirelles の作品。コーラスが楽しいR&B調のこの曲をきっと Laura Nyro も街角で歌っていたことでしょう。

「The Bells」(I.Bristol/G.Gaye/M.Gaye/E.Stover)モータウンに在籍していた The Originals の美しいバラード。

「Monkey Time(C.Mayfield)/Dancing In The Street (W.Stevenson/M.Gaye/I.Hunter)」前半は Curtis Mayfield の曲で Major Lance のヒット曲。後半は Martha & The Vandellas のあまりにも有名な大ヒット曲。ひたすらソウルフルに掛け合う LauraとLabblle の掛け合いが見事。

「Desiree」(L.Cooper/C.Johnson)50年代後期のニューヨークのドゥーワップ・グループ、The Charts の名曲。彼女は子守歌のようにしっとりと歌っています。

「You've Really Got A Hold On Me」(W.Robinson)Smokey Robinson & The Miracles のソウル・クラシック。The Beatles のカヴァーでも有名。オリジナルに負けないコーラスは絶品。

「Spanish Harlem」(J.Leiber/P.Spector)The Driftersに在籍していた Ben E.King ソロ最初のヒット曲。日本では山下達郎氏が『On The Street Corner』で取り上げたことで有名。

「Jimmy Mack」(E.Holland/B.Holland/L.Dozier)これも Martha & The Vandellas の大ヒット曲。

「The Wind」(N.Strong/B.Edwards/W.Hunter/ Q.Eubanks/J.Gutierrez)先述した、彼女が初めて買ったレコード。オリジナルはデトロイトの黒人ヴォーカル・グループ、Nolan Strong & The Diablos のシンプルながら美しい曲です。

「Nowhere To Run」(E.Holland/B.Holland/ L.Dozier)再び Martha & The Vandellas の曲。ジャンプ・ナンバーはモータウンから多く取り上げているのもこのアルバムの特徴です。

「It's Gonna Take A Miracle」(T.Randazzo/ B.Weinstein/L.Stallman)Teddy Randazzo の作曲。後半にかけての盛り上がりが感動的なラストを飾ります。オリジナルはThe Royalettes。

 自らのルーツと対峙するここでの彼女は、気負うこともなく少女の頃のように無垢にしてロマンティックに歌い上げていきます。どれもがR&Bの名曲ばかりでありながらここで展開されているのは彼女のオリジナルと言っても過言ではないほどで、彼女がごく自然にこうした音楽を血肉化していったことが伺えます。このアルバムは彼女にとって自らのよりどころとなる歌が収められた大切な歌集であり、それがゆえに単なるカヴァー集の域を越えて私たちに深い感動を与えてくれる名盤です。
 1972年彼女は初来日を果たします。ピアノの弾き語りによるコンサートでは足首に巻いた鈴が、ペダルを踏むたびに鳴ってエモーショナルな雰囲気を醸し出していたそうです。そしてこのあたりを境にして彼女は次第にシーンから遠ざかっていきます。





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