僕が初めて " Jerry Ross " の名を耳にしたのは NHK-FM でやっていた山下達郎さんの音楽番組『サウンド・ストリート/木曜日』、1984年4月5日に放送された「60年代ボーカル特集」でのこと。Jay & Techniques の " Strawberry Shortcakes ", そして、Spanky & Our Gang の " Like to Get to Know You " という2曲がラジオから流れました。1曲目の " Strawberry Shortcakes " は黒人のボーカルでしたが、そのサウンドはこれまで聴いたきたソウル・ミュージックとは異なり、どことなく白人の匂いのするダンサブルでスピード感たっぷりのナンバー。" Like to Get to Know You " は60年代の音楽にもかかわらず、大変スマートで洗練されたサウンドが印象的でした。そしてそれらの作品のプロデュースを担当した Jerry Ross のことを番組内で紹介していました。

 その後、1984年10月26日に放送された「ヤンキー・ビート&ボーカル特集」でも Bill Deal & The Rhondels の " Are You Ready For This " がオンエア。またも担当したプロデューサー、Jerry Ross のことに触れ、これらのサウンドがシュガー・ベイブに影響を与えたことについても言及していました。
僕はこの3曲の虜になり、これらをプロデュースした Jerry Ross なる人物に大いに興味を抱きました。

 当時はCDはおろかリイシューを専門にした会社もまだ少なく、オリジナルのレコードも容易に見つけることなどできない時代。そんなある日、たまたまセコハン屋で『Colossus Gold』というオンボロLPを500円くらいで見つけました。聴きなれた The Shocking Blue の " Venus " などに混じって、あの Bill Deal & The Rhondels の曲も含まれていました。クレジットを確認したら「Jerry Ross Production」の文字。Colossus というレーベルはこの Jerry Ross がオーナーだということがわかりました。それからです、「Jerry Ross Production」のクレジットに気をつけてレコードを探すようになったのは。

 1990年代中頃、まさにCDの時代、これらの Jerry Ross が関わった作品が英国の Sequel そして本国 Mercury 周辺から次々とリリースされるようになりました。

 スマートで洒落たソウル・ナンバー、キラキラ輝くポップなビート。そこには白人、黒人が本来持っている音楽性を超えた、見事な「融合」が垣間見られます。
その謎を解くべく、長年に渡って素晴らしいアメリカン・ポップスを創り出してきた偉大なプロデューサー、 Jerry Ross にスポットライトを当ててみたいと思います。

 もしかすると音楽の原石を宝石に変える「魔術」がみえてくるかもしれません。

V.A. / Colossus Gold (Original LP)


(富田英伸)



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