達郎書き起こしプロジェクト by ロック軍曹とサーカスタウン

2000/03/26 Sunday Song Book「盗作・パクリ・似たもの特集 Part 1」



山下達郎/Dreaming Girl 1998『Cozy』
大泉逸郎/孫 1999 Single
水沢明美/二度惚れ酒 1992 Single
George Harrison/My Sweet Lord 1970『All Things Must Pass』*1
The Chiffons/He's So Fine 1963 *2
The Doors/Hello, I Love You 1968『Waiting For The Sun』*3
The Kinks/All Day And All Of The Night 1965 Single *4
Jake Holmes/Dazed And Confused 1967 *5
Led Zeppelin/Dazed And Confused 1969『Led Zeppelin』*6
Len Barry/1-2-3 1965 *7
Len Barry/Like A Baby 1966 *8
Guitar Slim/The Things That I Used To Do 1954 *9
Guitar Slim/Bad Luck Blues 1954 *9
Guitar Slim/Something To Remember You By 1955 *9
キングトーンズ/ラストダンスはヘイ・ジュード 1981 Single *10

*1 全米No.1。Prod.by Phil Spector
*2 全米No.1
*3 2曲目の全米No.1
*4 「You Really Got Me」に続くヒット。全米Top10。
*5 コンピCD『Zeppelin Classics』(P-Vine)にも収録
*6 作詞作曲 Jimmy Pageとクレジット。
*7 デビューヒット。全米No.2
*8 セカンドヒット。全米No.27
*9 New Orleans出身のBlues Guitarist
Specialty盤『The Things That I Used To Do』に収録。
*10 大滝詠一のプロデュース。

一節
All Day And All Of The Night & Hello, I Love You のギターリフ
Dazed And Confused のギターリフ
Guitar Slimのお馴染みギターフレーズ

内容の一部(鈎括弧内は達郎氏のコメント)

・近況

「先週は何年かぶりに何もしない休み。何もしないと只一つ残っているスケジュー
ルがこの番組。音の素材集めに凝りだし、何のために休んでいるのかわからな
い。だんだん濃くなってきた。4月から自分のHPを立ち上げる見込みになった
ので、資料整理とかデータとかやって、はっと気が付くと白んでいる。」

・業務連絡

「3月31日NHK金曜夜9:15スタートのドラマ「晴れ着、ここ一番」の主題歌、竹
内まりやの「Dream Seeker」。レコード化は未定です。アルバムと睨みながら。
リクエストを来てますし、完パケもできてますが、まだです。特集があるので
(笑)。」

・特集の内容

「演歌の大泉逸郎さんの「孫」が盗作ということでマスコミで騒がれたり、そ
の前にも服部克久さんの曲が盗作だと小林亜星さんが物議をかもしたり、よく
言われますが、盗作・パクリ・似たものに対してちょっとやろうと思ったら、
幸か不幸か休みに時にやったら後から後から素材が出て来るんですよね。調べ
ちゃったりするとまた大変なことに。なかなか面白い展開になってきたので、
Curtis追悼は駆け足だったので今回じっくりやろうと。来週もやるでしょうが、
新年度最初がこれかよ、ひどいな(笑)。でもせっかく音作って来たんだから。」

「ある物は盗作といわれ、ある物はオマージュといわれ、この差はどこから出
て来るのか、じっくり腰を据えて。」

「特集を考えたきっかけは、「孫」が「二度惚れ酒」の盗作だとか、また馬鹿
なジャーナリズムが言い出しましてね、それを見てこんなの別にいいじゃない
かと思って、盗作とか考える企画をやろうと思った訳です。(大泉さんは)歌の
上手な方ですね。誰が言い出したのかわかりませんが、一つだけ言えることは、
言い出した人は演歌好きじゃないですね。愛していないからこういうことを言
えるんですね。」

「(「二度惚れ酒」をかけて)こんなもんまでマスタリングしてしまう奴(笑)。
(聞き比べると)頭の二行がちょっと似てるだけなんですよ。こんなもの演歌の
世界で似ている内にも入らない。演歌歌手の皆さんもこれに対する反応は冷や
かで、都はるみさんなんか「売れればいいじゃないですか」という感じで(笑)。
ごもっともでございます。」

「パクリとかいう根拠は何か。ポピュラー・ミュージックというのは商売です
ので、ヒットしたパターンとかフォーミュラというお決まり事があり、それが
偶然似る場合もあるし、意図的・確信犯的にお金儲け目指して似せる場合も、
古今東西ある。オールディーズの番組なのでそれに沿ってやると、アメリカや
イギリスにもそういう問題が沢山ある。古典的な盗作問題で有名な曲を2パター
ン程。」

「有名な訴訟事件になったのがGeorge Harrisonの「My Sweet Lord」が
Chiffonsの「He's So Fine」の盗作だとされた件。訴訟の結果、Georgeが敗け
ました。George自身は当時ヒットしていたThe Edwin Hawkins' Singersの
「Oh Happy Day」にインスパイヤされたとのこと。でも作ってから言われるま
でそれに気付かなかったのが悔しいと言っている。まあアレンジがこれだけ違
うし、Phil Spectorですよ。たしかにメロディーはそっくりでしたけど。音楽
の傾向が全然違うので、どうなのか、今は闇の中。」

「その2年前にDoorsの「Hello, I Love You」がKinksの曲の盗作だと言われ
た問題もあり、これもかなり揉めましたが、うやむやになりました。これはメ
ロディーというよりはコードのパターンですね。ロックはパターンミュージッ
クですから。この場合はギターのパターンが似ているということ。」

「何でそういう問題が起きるのかというと、これ商売なんですね。著作権なん
ていうものがあって、勝手に自分の曲を他人に盗用されない。盗作だというと
印税が何%かもらえたりして、金儲けが後ろに働いている。日本でも4小節まで
は盗作とは言えないなど、昔から論議を呼んでいる。」

「いろいろお便りを頂いているが、何が盗作だとか暴露するのが目的じゃない
ので。そういう皮相な特集じゃありません。もっと深い内容です。」

「次はちょっと違うニュアンス。Led Zeppelinというロックを代表するカリス
マが居まして、リーダーのJimmy PageはYardbirdsに所属して、それがLed
Zeppelinに発展しましたが、1967年にYardbirdsがアメリカツアーをしている
最中に、Jimmy Pageは自分が好きなJanis Ianのコンサートを見に行きました。
その前座にJake Holmesというアシッドフォークのシンガーが出て来て、その
人が歌った曲に非常に刺激を受け、出たばかりのアルバムを買って、
Yardbirdsのリパートリーに加えたのだけど、歌詞を全部変えてしまった。メ
ロディーはほぼ同じ。それがZepの1stアルバムに入っているが、作詞作曲
Jimmy Pageというクレジットになっている。メロディーも一緒なのにどうして
か全然問題は起きません。私はZep周辺にあまり詳しくないので、本当に問題
になってないかどうか知りませんが、一つだけ言えることはこのJake
Holmesの曲にインスパイヤされたことは間違いありません。」

「Zepというのは改作とか換骨奪胎が物凄く多いグループで、この曲の場合、
リフやキメのフレーズはJake Holmesの頃からあります。でもZepのクレジット
はPage。どうなっているのか。日本的な意味合いで言うとメロディーがどれだ
け似てるかというのがパクリですが、ロックの場合はメロディーが有って無い
がごとしで、パターンがどうかと作曲的な分野より編曲的な分野の方がそうい
う問題を孕んでいるのかなと。しかしながら初めて見たものを親と思うからか、
我々の耳にはZepの方が遥かにテイクが素晴らしく聞こえる。これは仕方がな
い。」

「他人様同士だと盗作だとかいろいろ言われるけど、作っている御本人でも同
じような感じでずっと継ると、人はそれをワンパターンという。かくいう私も
そんなことを言われて育って参りました。ヒットソングの世界では、デビュー
曲が物凄くヒットすると2曲目もそれにならった。いわゆる二匹目のどじょう
ですね。そういうのをセカンドヒットといい、そういうのが好きな人も沢山い
ます。代表例がLen Barryで、リズムパターンは同じ、メロディーちょと違う。
セカンドヒットの典型。」

「日本では同じ傾向というかワンパターンがネガティヴに言われるが、実はワ
ンパターンというのは実は大変悪いことではない。聞けば一発でわかるという
のは、その人のミュージカル・キャラクターを雄弁に物語る何よりの武器であ
り、特にブルーズとかルーツミュージックとかいうプリミティヴな音楽はそれ
は欠くことができない。全部同じだからって、むしろ褒められるという、そう
いうもの。」

「代表例がGuitar Slimというニューオーリンズを代表するギタリスト・ボー
カリスト。スタジオ・ミュージシャンとしてもニューオーリンズのいろいろな
ヒット曲に関わっている。(この人の曲は)日本的な尺度からすると、みんな同
じじゃないか、これがいいんです。我々の仲間内で遊びでギターを持ってこの
フレーズを弾くと、お、Guitar Slim。こうじゃなきゃいけないんです、ミュー
ジシャンは。これがブルースの心です。ですからこういう尺度から言うと、冒
頭の「孫」なんて何の問題もないんです。そういうのをあげつらって言う奴の
方がおかしい。と言って一生懸命私は弁護してあげますけど。」

「ロックンロールの場合はパターン・ミュージックですので、パターンそして
コード進行というのも大きなファクター。Beatlesの1968年の「Hey Jude」は、
Paul McCartneyはこれを作る時に参考した曲が一つあり、それがDriftersの
1960年のヒット「ラストダンスは私に/Save The Last Dance For Me」。この
曲みたいな曲を作りたいということでして、コード進行がほぼ同じなんです。
従って「Hey Jude」のカラオケで「ラストダンスは私に」が歌えてしまう。こ
こに目を付けたのがキングトーンズの1981年のシングルで、プロデュースはも
ちろん大滝詠一氏。このレコードは我々の間では珍重されました。」

今後の予定ですが

・4/2は「盗作・パクリ・似たもの特集 Part 2」
今度は邦楽にも触れるので、相当えぐい内容になるとのこと。



circustown.net による放送書き起こしです。文責 circustown.net。抜け誤りはお知らせください。


Copyright (c) circustown.net 1999 - 2006, All Right Reserved